
保育士経験10年以上、家庭でも子育て中です。
子ども複数人で遊んでいると『おもちゃの貸し借り』の場面が多いと思います。
「貸して」
「いいよ」
「ありがとう」
「あとで」
これらの言葉・やりとりの流れを伝えていくのは、他でもない『大人』です。
この記事は以下のような思いを持つ方向けに書いています。
・子どもがおもちゃの貸し借りを上手くしてくれない
・おもちゃの貸し借りって、どうやったらできるようになるのか
ちなみにこの記事では『答え』というより『ヒント』を書いているイメージです。何かのキッカケになれば幸いです。
おもちゃの「貸して」「いいよ」のやりとり

そもそも他の子が持っているおもちゃに触れてみようとする・興味を持つというのは【他人への興味が湧き始めた証拠】とも言われています。
人間は1人では生きていけないので、この姿はいわば本来持っている本能的な部分ともいえますね。
そこで更に見られる場面は【おもちゃの取り合い】から始まるケンカ・トラブルではないでしょうか。
これが始まると、大人の介入が必要です。
「貸しては?」
「どうぞは?」
「ありがとうは?」
こういった言葉を投げかけたことがある方も多いと思います。とても大切なことですね。
『こういう場面では』『こういう言葉を使ってやりとり』というのは、大人が伝えていく以外、習得する術は基本的にありません。
ここで【あたりまえ】と思って、思考停止で伝えていくのではなく、考えたいことが1つ。
「貸して」「どうぞ」の【強要】【強制】になってないか?ということです。
確かにこういったやりとりは、出来るようになった方が良いし、出来るようになって欲しいという思い・願いがあります。
それをサラッと伝えるだけなら良いものの、子どもが言ってくれないからといって「貸してでしょ?」「ありがとうは?」と、いつまでも言い続けてしまうと、もはや【言わされている】領域です。
『言葉のやりとり』を教えていたつもりが、子どもにとって「貸して」「ありがとう」のやりとりが【ただの作業】になってしまいかねません。
じゃあ、どの程度伝えていけばいいのか…ということで、ここからはたとえ話なども交えながら、解説していきます。
まずは『大人同士のやりとり』に置き換えてみる

たとえ話です。
あなた自身が新しい本を買った、CDを買った、何か手元で楽しめるモノを手に入れたとします。
ワクワクしながら早速、楽しみ始めます。
楽しみ始めたんですけど、2~3分も経たないうちに
「ちょっと、それ貸して」
と家族や友達から言われたとしたら、それ、貸すことができますか?
僕は貸せません。
楽しみで買ったのに、まだ自分自身が楽しんでないのに、満足してないのに…。
もし貸せるとしたら、その内容に満足した、暗記した、人にすすめたいと思った…など、こんな心理状態になったときだと思います。
大人がこの状態なのに、子どもにそれを課すのは酷だとは思いませんか?
『おもちゃの貸し借り』は、確かに必要な場面ではあるんですけど、実は大人にとっても難しい場面だということです。
『満足しているか』がポイント

大前提として、子どもは『脳』が発達途中です。感情的なやりとりは、習得真っ最中。
「貸して」が言えるように伝えていくことは、もちろん大事です。
大事なんですけど、まずはそのおもちゃで『満足するまで遊ぶこと』が、大切になってきます。
夢中になるまで遊んでいたはずなのに、突然そのおもちゃをポイっと置いて、他のおもちゃを手に取ったり、別のところに行ったりすることってありませんか?
あれはまさに【そのおもちゃで遊ぶことに満足した】姿そのものなんです。
(もちろん、他にもっと興味が湧くモノを見つけたからそっちに行った、ということもあります)
「貸してあげてもいいかな」と思えるくらい、まずはそのおもちゃで遊ぶ時間と空間を確保してあげましょう。
繰り返しになりますが「貸して」「いいよ」のやりとりを伝えるのも、大切なことです。
大切なんですけど、強要・強制するのではなく、あくまで伝える程度に。
ある日突然、おもちゃの貸し借りがスムーズにできる日が来るはずです。
過去の経験談

ここからはオマケの話で、少し話題はそれます。
過去に担任を務めていたクラスで「ありがとう」という言葉について、伝えていたことがありました。
ある子どもが友達に向けた発言で、気になった言葉がありました。
「教えてもらったら、ありがとうって言わないと!」
ここでちょっと思いました。
純粋に『誰かの手助けをする』というより『ありがとうを言われるために、手助けをしていないか?』と。
「ありがとう」を強要・強制したつもりはないのですが【伝え方】が難しいなと思った1コマでした。
「そんなつもりはなかったのに」と思っても、伝わり方は人それぞれ。
【伝え方】に気を付けることは、損ではないなと思いました。